2013年09月24日

Mちゃんの矯正治療 第五回 ~治療方針の説明①~

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今日は晝間先生から本格的な矯正治療計画の説明を伺います。実際にどのような流れで治療を行うのか、これまでの検査データを元に、抜歯の計画も含めてMちゃんとご家族の方への説明をしていただき、矯正の本当のスタート地点に立ちます。

来年には受験という大事な時期を控えたMちゃんは抜歯のタイミングが気になるようです。毎日充実した中学校生活を送っているMちゃん、部活などで忙しく前回の検査からやや期間が開いてしまいましたが、これからまた頑張って治療を続けてゆきます。


 

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今回はカウンセリングルームで詳しくお話を伺います。カウンセリングルームはプライバシーに配慮した個室で、大きなモニターを見ながらリラックスできる環境でこれまでの検査結果と治療計画の説明をしていただきます。

 







<カウンセリングルームにて>

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ひるま先生(以下Dr):「こんにちは。今日は、治療方針について説明します。こちらはMちゃんの治療計画書です。これまで行った検査を分析させていただきました」

ひるま先生から18ページに及ぶ治療計画書をいただきました。

治療を受けられる患者さん全員にお渡ししているそうです。

これから説明してもらう「治療計画」「検査結果」「歯の状態」など詳細な情報がびっしりと記載されていました。自宅でもすぐに確認ができるようにまとめられていて安心できます。



Dr
「まずうちの病院のシステムをご説明します。基本的に僕たちが目指してるゴールというのは、Mちゃんが80歳のおばあちゃんになった時、綺麗に治した歯並びで、その歯が全部元気であり、しっかりとご飯を食べる事ができる状態になるように、そこから逆算しています」


Dr
「今の日本人は平均で80歳で11本歯が残っていると言われており、歯がなくなると普通は入れ歯を使います。入れ歯というのは残っている歯にクリップのようなものでひっかけて装着するのですが、クリップの所に力が掛かってしまうために残っている歯がまた駄目になってしまう。結果的に全部歯がなくなってしまうというのが今の日本の平均的な流れです」

まずは現在の日本人の歯の本数がどのように減っていくのかお話を伺いました。次になぜ歯がなくなってしまうのか?先生から詳しく説明していただきました。

Dr「9割の歯は「虫歯」「歯周病」でなくなってしまいます。残りの1割は元々歯の形が悪かったり、また折れてしまったりなどの特殊な条件です。虫歯と歯周病、種類は違いますがどちらもばい菌が原因です。ばい菌が歯の表面にべったりとこびりついてしまい、毒を出したり酸を出したりする事で歯やその周りを溶かして歯がなくなってしまうのです。予防するには「ばい菌を取ってあげる事」と、「ばい菌と闘う口の中の環境のバランスをコントロールしていく事」が必要です。虫歯も歯周病も基本的には口の中の環境のバランスをコントロールしていく事で歯を守っていく事ができます。今回は矯正の検査だけでなく虫歯菌や歯周病菌とのバランスも調べました。Mちゃんが矯正治療中や治療後にも虫歯や歯周病にならないように、必要な検査と、検査の結果からどんな歯の治療をしていけば良いかを僕たちは考えています」

歯がなくなる原因は口の中の「ばい菌」である事がわかりました。

ばい菌から歯を守るためにはどのような対策をすれば良いのでしょうか?

Dr「Mちゃんだけではなく、今僕たちの病院にきてくれている患者さん全員に同じ流れで対応しています。まずはMちゃんの口の中が今どんな状況になっているかを把握するための検査をしてきました。今日はその検査結果を説明していきますね」

Dr「まず細菌を取ってから矯正治療に入ります。最初は「初期治療」という「治療のための準備の治療」です。歯石を取ったり、歯磨きの練習を行います。すぐに歯を動かす治療ではありません。歯石を取ると言っても普通の歯医者さんの治療と違い、本当に良くなっているかどうか確認する必要があります。磨き残しが減ったら矯正治療に入っていきます。矯正治療後も、歯並びが良くなった状態で本当に虫歯や歯茎の病気のリスクが下がっているかを調べるための検査を行います。下がっていなかったら再度チェックをします。残っているリスク、虫歯や歯周病になるかもしれないリスクをコントロールしていき、あとはMちゃんが大人になる過程でお口の中の環境が変わり、悪い状態になってしまうリスクがあるので、メンテナンスを繰り返していく事で歯を守れるようにします。そのための準備としての矯正治療の方針をこれからご説明していきます」

これまでの検査の分析結果と合わせて、矯正治療の方針を説明していただきます。

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Dr
「一番最初にMちゃんがきてくれた時、2008年の8歳の時の画像です。お父さんがMちゃんの歯並びが悪くなりそうだなと心配し受診した際です。この時は歯並びのチェックと虫歯と歯茎の病気予防のチェックをしました」

Mちゃんが8歳の時に撮影した写真やレントゲンの画像を元に説明して頂きました。







Dr
「この時すでに問題点があり、顎の骨の中に歯が入りきらなくて歯が重なって生えてきたり、前に出てきてしまうという状態でした。これはまだ大人の歯が生えきっていないので、この後も歯並びが悪くなっていく要素があり、この時期には治せないというお話をしました。歯磨きをしながら、きちんと大人の歯を生やしていった方がいいとお話しましたね。この時期にレントゲンを撮らせてもらって骨格などを記録し分析する事で、将来のMちゃんの骨格がある程度予想でき、将来のMちゃんの骨格と比較する事で、矯正治療を始めるタイミングや、この先どういうふうに変化していくのかがわかります」

子供の矯正を始める場合、まだ永久歯が生え揃っていない、顎の骨が成長しきっていない時点では急いで矯正を始めるのではなく、成長するまで経過観察を行う事でしっかりとした治療計画が立てられると言う事です。

Dr「すこしクリーニングをしながら、本当は3カ月に1回か、半年に1回くらいきてもらうと良かったのですが、今回はちょっと間隔が空いていますが、矯正のための検査をしてもらいました」

Dr「こんどはこちらが今のMちゃんになります。基本的に骨格のバランスは最初の時とそんなに変わっていません。顎の骨に対して歯がすごく大きいという状況で、歯が入りきらず口を閉じた時に歯が前に出てしまう状況でした。前の所が重なって生えてきたり、上の方は部分的に重なって生えてくるという状態です。」

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Dr
「このレントゲンはMちゃんの頭を固定して撮影したレントゲンになります。8歳の時と同じ条件で撮影しています。上の歯はけっこう前に出てきていますが、下の顎はあまり前に出てこないで下の方向に成長してしまっているというバランスでした。これは見慣れないと分からないのですが、上顎に対して下顎がついてきてないというタイプの成長になります。わかりやすい数字としては「ANB」という数値がありますがMちゃんは「ANBプラス7度」です。上顎に対して下顎が約7度ずれている状態なので、ずれがちょっと大きいです」


ANB
とは上下の顎の位置関係をしめす数値の事です。男性は大体2度、女性は4度くらいが通常だそうです。





お父様(以下F):
「下の顎の成長が良くなかったとの事ですか?」

Dr「劣成長です。これはFさんもそうなんです。お父さん似の骨格だと思います」

F「例えば固いものを食べさせたりすれば多少は変わるものですか?」

Dr「ものすごく固いものを噛むと良い影響があるのではないかと思います。ビーフジャーキークラスを毎日毎日食べる感じですね。かなり咀嚼回数も多くなります。食生活が豊かになりましたが軟食が増えて、咀嚼回数がものすごく減っているんですね。そのために顎が小さくなってしまっている。Fさんの場合は多分家系的に顎が細くて小さい、現代的な顔ですが、そこに現代的な食生活が加わって顎が小さい。一方で歯の1本1本のサイズはそんなに変わらないので、顎の骨が小さくて歯のサイズが入りきらずにでこぼこになり、歯が前方に突出してしまっているので口が前に出てしまっている。あとは上顎に対して下顎が後ろに位置しているので、上下とも歯並びがでこぼこしています。顎の大きさを大きくしたり小さくしたりできればいいのですが、今の医療で骨を大きくしたり小さくしたりっていう確実な医療はないんです。下顎も切ったりはできますが、普通の成長を促していく事はできないのです。手術するとデメリットもあるのでこの大きさにあわせて歯並びを治していくのがベストだと考えます。Mちゃんの場合、顎のずれは大きいですが異常というレベルではなく、個性の範囲です」

ゆるやかな食生活の変化が、私たちの歯並びに影響してしまうと聞いて驚きました。ご飯を食べる時には、よく噛んで食べなさいと言われたものですが、顎の発達のために重要な事だったのです。

F「お父さんは色々考え勉強した結果、Mには歯を抜くことが一番いいと思った。なんで矯正するかっていうと、1つは健康な歯になってもらいたい、美しい口元になってほしくて、そのために一番いい方法が4本抜歯する方法だとお父さんは思ってる。いい?」

M「はい」

F「これはたぶん大人にならないとわからないと思うけど・・・」

Dr「そうですね。歯を抜きたいっていう人は中々いない。はいそうですっていってくれる方はいらっしゃらないですけど矯正治療を確実にやっていくためには抜歯が必要ですね」

抜歯での矯正は親御さんにとっては大きな決断だという事がとても伝わってきます。Mちゃんにはまだ難しいかもしれませんが、矯正が終わった時に、親御さんの思いが伝わると良いと思いました。




■どこの部位を抜歯する?

Dr「抜歯の部位は、位置関係を合わせていくために通常であれば上下同じ場所の歯を抜歯していきますが今回は

上は真ん中から数えて4番目の歯を左右抜歯します。下は左右5番目の歯を2本抜歯していきます。この抜歯で、下は凸凹を取りながら下の前歯をあまり下げないようにわざとしていきます。Mちゃんの場合、顎が上顎に対して後ろにいますから、下の歯も上と同じように下げていくとずれがそのままの状態で残ってしまうのです。それを防ぐための抜歯ですが、骨のずれの中で歯をきちんと噛み合わせるようにしていく事ができると思っています。





■どんな歯並びになるのか?矯正後の予測の模型

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Dr
「こちらがMちゃんの矯正治療後の予測の模型になります。そしてこちらがMちゃんの現在の歯の模型です。これと同じ模型をもう一個作り、そこから矯正した後の模型をつくりました。上の歯は歯を動かしてでこぼこを取り、後ろに下げていく事によって口が閉じやすくなります。口元のバランスも改善していくと考えています。下の方は同じように前後的にずれないようにしていきますが、抜歯した部位の前歯を下げないで奥歯を前に出すように引き上げています。こうして骨のずれを治していけると考えました」

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■治療の期間はどれくらい?また治療中に起きる問題

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Dr
「この治療期間はだいたい2年半くらいです。Mちゃんの年齢はすごく歯が動きやすい時期なのでもしかしたらもっと早く治るかもしれないです。ただ逆におもったより反応が悪いこともあり、時間がかかってしまう可能性もあります。あとは上の歯をできるだけ下げていかなければいけないので治療の途中でヘッドギアを使わなくてはいけなくなるかもしれません」

Dr「ヘッドギアはこういう装置になります(※左画像参考)。お家で使ってもらってゴムがかかっているところから上顎をぐっと抑える。これは結構大変です。今Mちゃんは塾も行かれてますか?」

F「はい」 





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Dr「部活とかあって大変なんだけど、家に帰ってから使ってもらうよう途中で指示を出すかもしれません。もしこういったものが使えない場合は上顎と下顎をバネでつなげて、バネの力で下顎の歯を前に出していくというものを使います。ただこれは自分でとりはずしができないのですごく大変なんです。さらに大変になりますがアンカースクリューといって顎の骨にねじをうって歯を下げる力を強くするというものもあります。これももしかしたら使う可能性があります。できるだけこのような付加装置を使わず、動かすことが出来ればいいと思いますし、Mちゃんのケースに関しては一番負担が少ないヘッドギアを使う可能性があると思っていてください」



Staff「寝てる時もつけるのですか?」

Dr「お家にいる時はずっとですね。実は1日17時間つける必要があります。寝ている時も含めて家にいる時間のほとんどなのですが、使ってみて効かない場合が結構あるんです。そうすると口の中の装置になってしまう。小さくてパワーをださないといけないので複雑な装置になります」

F「口内炎とかもできやすいですか?」

Dr「そうですね。ごみがとてもたまりやすくなるので使い辛いです」

F「アンカースクリューはどうですか?」

Dr「使いやすいのですがMちゃんの年齢だと骨が柔らかいのでまだ使えない可能性があります」

F「受験と重なる時期ですよね?抜歯はいつ頃になりますか?」

Dr「まず歯のクリーニングから入りますので、矯正の抜歯は受験の前には終わって装置をつけられていると思います。矯正治療中に受験がくるという事ですね」

F「タイミングは先生にお任せしたいと思いますが、ただ受験の時にあんまりその・・・・・・」

Dr「今中学2年生?」

F「はい。受験の時に負担が掛かる事が心配で・・・・・・」

Dr「高校受験の時にはもうだいぶ慣れていると思います。ただヘッドギアなどを使う場合は大変かもしれません」

F「わかりました」



■矯正治療を始めるための“初期治療”

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Dr
「今後の流れを説明します。今の状態だと、磨き残しが多く、口の中に虫歯の原因となるミュータンス菌も多いので、矯正装置を装着してしまうと装置の周りに細菌が溜まって、装置をはずした時に歯がぼろぼろになるという事が起きかねません。僕たちの最終的なゴールは歯並びを綺麗にするだけではなく、Mちゃんがおばあちゃんになった時まで歯を長持ちさせる事です。矯正治療をする前に虫歯と歯周病と歯肉炎の予防をきちんとしていくためにまずクリーニングをしっかり行っていきます。」





Dr
「黄色い部分が磨き残しの所です。73%と4か所中3か所、ほとんど磨き残しがある。歯と歯の間は98.2%なのでほぼ100%磨き残しがある状態です。磨き残しを30%くらいにまで下げていかないと矯正治療は始められません。磨き残しの割合を下げるために衛生士さんと一緒に考えていきます。」

F「フロスを使っていないから磨き残しが多いのでしょうか?」

Dr「そうですね。フロスや歯間ブラシを使っていないと磨き残しは多いです。今の状況だとあまり歯間ブラシは入らないのでタフトブラシを使うのも良いです」

F「フロスはプラスチックに糸を張ってあるものですか?」


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Dr「指で奥まで入らない人はああいう物を使っていただくと良いですよ。研究結果もありますが歯ブラシだけだと7割ぐらいの人が磨き残しがあるそうです。タフトブラシや歯間ブラシというような特殊な清掃機を使っていただくとそれが95%くらいまでメンテナンスできます。ただ磨き残しが固くなっていくと歯ブラシや歯間ブラシだと落ちないので、きちんと歯科医院での機械での清掃が必要になってきます。歯ブラシや歯間ブラシを使っていく事はとても効果がありますので、そういった形で対応していきたいと思います。」




タフトブラシは細くとがった歯ブラシで歯と歯茎のすきまを磨くのに適しています。デンタルフロスは使い方に慣れるまで難しく感じますが歯肉の間を掃除する事ができます。

F「治療に伺うのは月に一回という事で良いですか?」

Dr「最初はたぶん2週間から3週間に一回くらいきてもらった方が良いと思います。だいたいですね。上顎下顎とか上顎右側とか上顎左側とか集中して部分的にやっていきます。1クール終わってみて再評価という場合が多いです」

F「なるほど。じゃあそれができるようになってから抜歯に入っていくのですね」

Dr「そうです。ですからクリーニングができない場合は矯正治療をしない方がいいですし、抜歯もしない方がいいんです」

F「逆に受験までにやっとできるようになった場合は?」

Dr「受験後に歯を動かした方が良い場合もあります」

F「わかりました。それはもう本人次第と言う事ですね」

Dr「そうですね」


■隠れていた問題 「歯の根っこが短い」!?

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Dr
「Mちゃんの隠れている問題点として、歯の根っこが短いんです。前歯が解りやすいですが、隣の歯よりも根っこが短いんです。これはもって生まれたものですがレントゲンをみると全体的に歯の根っこが短いんです」

F「そういえば私も短いって言われて・・・」

Dr「矯正治療して必ずではないのですが、根っこが吸収されて短くなってしまう方がいらっしゃいます。矯正治療後に歯の動揺があって、止まらなくなったりとか、最悪の場合、例えば矯正治療後10年とかで抜かないといけなくなっちゃう事もあるかもしれない。歯根吸収に関しては本当にわからないんですね。2004年にここに移転してきてから、一番ひどい吸収の方は600症例中1症例ぐらいなんですが、600分の1というのは低い確率ではない。歯根吸収がおきる可能性はあるんです。このリスクを回避するためには矯正治療をしないという選択になります。いつ矯正治療しても歯根吸収はおきる可能性がありますし、抜歯してもしなくても矯正治療で歯を動かし始めると歯根吸収してしまう可能性があります」


F
「短根の場合は、歯根吸収してしまう例というのはもっと可能性としては高くなるんですか?」

Dr「短根の方が歯根吸収しやすいんです」

F「そうですよねー・・・」

Dr「もともと歯の根っこの成長が活発じゃないっていうとらえ方なんですね」

F「なるほど。先ほどの600症例に1症例という事は歯の根の長い方を踏まえての600分の1という事ですか?」

Dr「そうです」

F「短根だと・・・・・・」

Dr「確率はもっと上がりますね。ただ短根でも思ったほど吸収しないっていう方も結構いらっしゃいます。さんざん僕が吸収するかも、ごめんなさいという勢いで始め、全然大丈夫でしたっていう方もいますし」

F「どれくらいの割合でしょうか?」

Dr「実際には論文や、大学の他の先輩の先生のさらにその先輩の先生が矯正治療を行って、十年後二十年後に再診に来て、抜かなくてはならなかったという方はいらっしゃいました。でも僕たちの病院では根っこの吸収はありましたが抜いたという方はまだいません」

F「先生、私に似て遺伝だとしたら私が先にやってみてもよかったのですね」

Dr「それもあるかもしれないです。歯の根っこが短くなって抜けるのではなく、周りの骨がなくなって、支えるものがなくなりグラグラになってしまいます。周りの骨を少なくしないっていうのは虫歯や歯周病の予防になり、コントロールができますので根拠のある予防はできますが、根っこの吸収という事に関してはいまだに原因が良くわからないので、特に遺伝の要素があると言われています。家系的に歯根吸収がおきやすいという可能性があるので、そのリスクがあると思って治療しないといけません」

F「わかりました。うちではそのリスクの方が大きいですね」

Dr「そうかもしれないですね。ですので、まずきちんとクリーニングができるようになってから、矯正治療を開始という流れになります」

F「わかりました。今私が心配になっているのは歯根吸収の問題だけですね。抜歯が怖かったのですが、私が先に矯正治療をやってみれば・・・」

Dr「それはもちろんかまわないです。ただ数年経たないと結果が見えてこないんです。一年後、二年後で出始めたりはするんですがそれがどの辺で落ち着くかというのはやってみないとわからない」

F「わかりました・・・」

Dr「それではこの後は、担当衛生士から今回のリスクについてご説明します」

F「ありがとうございます。(Mちゃんへ向けて)ちゃんと歯ブラシしないとだめだって」

M:「はい」

Dr「歯ブラシも大切ですが、虫歯や歯周病のリスクがどんな状態で上がるのかという知識が大切になっていきます。この後衛生士さんからお話してもらいます。今日だけで説明するには量が多く無理なので、メンテナンス、クリーニングを通して繰り返し説明していきたいと思います」

M「お願いします」

治療方針の説明②に続きます

投稿者 Kanba : 2013年09月24日 16:18

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