2013年09月24日

Mちゃんの矯正治療 第五回 ~治療方針の説明②~

 

 


 

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治療方針の説明の後半です。晝間先生からの説明が終わり、今度は担当の衛生士さんからこれまでの検査結果と今後の治療のお話を伺います。

 

 

 






■担当の衛生士さんから検査結果の説明 
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衛生士さん(以下DH):「前回、現在のお口の中の状態を調べました。この検査自体は2回目です。虫歯を治療した歯と、治療が必要な歯はゼロでした。

磨き残しは少しありました。チェックした場所を数字にしています。飲食の回数も問題なく、フッ素も使われていました」

 





■唾液量と虫歯、磨き残し  
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DH:8歳の時の唾液の量ですが、大人と違って歯の本数も少なく、噛む力も弱いので唾液量としてはこれぐらい少なくても問題ないです。今後改善される可能性もありますね。虫歯の原因菌が意外と多いのですが、虫歯はゼロでした。細菌が多くても歯の方が強かったので虫歯になりにくかったのではないかと思います。どちらかというとラッキーな状態が続いていますね」


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「そうでしたか」

 

DH:「まだ虫歯は予防できていますが、歯と歯の間の歯茎に近いところで磨き残しがありました。全部で140か所こちらの中でチェックしています。この黄色く色のついている所が磨き残しです。140か所中103か所で73%です。歯と歯の間だけだと56か所に減りますが、このうちの55か所に磨き残しがあったので98%になっています。磨き残しを減らす方法としてホームケアの見直し、歯磨きの方法を確認していきたいと思います。飲食の回数は1なので問題ないですね。フッ素の歯磨き粉も使っていただいています。噛み合わせの問題で唾液の量が少ないですが、噛み合わせを改善する事で唾液量を増やす事ができると思います」

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■唾液の働き
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DH:「口の中にいる細菌たちは、私たちが食べたものを一緒に食べていきますが、その食べたものを消化しようとする時に酸を出して溶かしていきます。ミュータンス菌の出した酸によって歯の表面が解けて虫歯になっていく。その虫歯の始まりを脱灰と言います。唾液は酸を中和してくれてさらに歯を元に戻してくれる働きがあるんです。量が多い方がさらに良いです」

 



■唾液量を増やすには?

DH:「唾液量を増やす方法として、たくさん噛む事です。ガムを噛んだり、一回の食事で20回から30回噛んでください。他には一日1リットルから1.5リットルの水を飲む事で、すぐに唾液量が増えるという訳ではないですが、積み重ねる事で唾液量が増えていく方(かた)がいます。ただお茶だと利尿作用があって身体に水分として残っていられないので、コップだと1日5杯以上は飲むようにしてください。できそうな事から始めていってください」

M「わかりました」

DH:「ミュータンス菌はとても強い細菌なので減らす事ができません。子供の歯が生え揃う時期3才までの時期に細菌が入ってきてそのまま定着してしまってそこから増える事はないのですが、逆に減る事もないです。この細菌と上手く付き合っていく事で虫歯がゼロの状態を維持していく事ができます」

 

■ミュータンス菌への対策

DH:「ミュータンス菌には、活発に動かないようにフッ素で押さえつけておく事と、キシリトールを摂る事が効果的です。キシリトールを長期間取って菌が減らしていけるというデータは出ています。あんまり短期間だと効果は出にくいんですが長期間だと効果がありますので、キシリトールのガムを噛む事が良いです。後はプラークの中に入っている細菌の塊をしっかり取ってください」

 

DH:「まずは歯磨きとキシリトールを取り入れていただきたいと思います。検査で虫歯のリスクが高いと出ていますので、今の生活を続けると、虫歯ができてしまう可能性が高いです。ホームケアだったり普段の生活のなかでできそうな事から始めていただければと思います。私たちの方では機械を使って一緒に磨き残しをコントロールしていきたいと思います。あと合わせてフッ素を使っていき虫歯予防を強化していきたいと考えています」

M「はい」

 


■歯周病の話
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DH:「今度は歯周病の方ですね。今特に歯茎から出血もなく炎症症状は全く見られなくて歯茎の健康状態は問題ないです。本当は今年齢的に思春期のころになりますのでこの時期は女性ホルモンを好物とする細菌が増えていってこの時期歯茎が腫れやすくなってくる時期でもあります。その中でも歯茎の炎症がなくて歯茎の健康状態が良いので、それも維持できれば良いと思います。もう少し年齢が高くなっていって身体の方が安定してくると、こういった時期を乗り越えていく事ができると思います。歯茎に近いところの汚れもそれ以外の歯茎が炎症を起こす原因にもなりますので歯茎の近いところの汚れを取っていく事、歯茎の病気の予防に関しては歯茎のマッサージをしていく事が必要になります」

 

DH:「歯茎より上のところのプラーク除去や、歯石になってしまうと普通の歯磨きでは取れないので私たちが取っていきます。磨ける部分の汚れはしっかり取っていただいて、歯茎が炎症をおこしていかないように、Mちゃんと私たちで分担しながら歯周病を予防していきたいと思います」

 

DH:「今のところ症状も出てないので問題のあるところはないですね。唯一あるとするとプラークの蓄積量だけなのでコントロールができれば今の時期上手く乗り切っていけると思います。歯周病リスクは数字だけ見ると虫歯より少ないですが、要注意と出ているので、うまくコントロールして歯周病も一緒に予防できるようにしていきましょう」

 


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DH:「先生からの注意点があります。お家では磨き残しが心配なので、特に注意していただきたい点です。歯磨きにはクール法という磨く順番を決めて、磨きムラを減らしていきましょうという方法があります。

先生からの指示では2クール、2周磨いて下さいねと書いてあります。1周目の時には歯の面の汚れを取ってもらって2周目の時には磨いていく場所を歯茎に近いところや歯と歯の間を重点的に磨いて下さい。使っていく道具も分けながら磨いていって下さいね。フッ素のジェルを使用するように書いてありますが、家で使っている歯磨き粉の使い方を工夫していくだけでもフッ素を積極的に使えるようになるので改めてジェルを購入してもらう必要はないと思います。効率のいいフッ素の使い方があるので次回に確認していきます」

 

クール法は磨く順番を決めて2周磨くというものです。治療計画書にも記載されています。歯ブラシの当て方も合わせて記載されているので、いつでも確認する事ができます。

 

F「たとえばプラークを落としてないのにフッ素をつけても効果はあるものなんですか?」

DH:「まったくないわけではないですが、落としてもらった方がより効果は出やすいですね」

F「そうなんですか」

DH:「プラークの中にフッ素が入っていく事で細菌の働きを弱めてくれるので効果がないわけではないですが、やはり落としてもらってからのほうが良いですね」

 

DH:Mちゃんは特に治療が必要な虫歯などありませんので歯磨きがメインとなります。ホームケアの見直しを一緒に行い、医院では機械を使った歯磨き、クリーニングをしていきます。先生からは磨き残しが30%以下になったら治療を始めていきましょうというお話なので、歯茎からの出血がない今はこれを維持していきましょう。磨き残し30%以下を目標に、歯磨きの仕方の確認とクリーニングを、私たちの方で行っていきたいと思います」

 

DH:「治療が始まった後の流れは計画書に記載してあるので後で読んでおいてください。初期治療は最短だと2回です。1回目の時にはホームケアの見直しをお話していきます。2回目の時にはお話した事が実行されているかどうかのチェックを行います。状態がよければ矯正治療始めていく時に奥歯から装置をつけるのですが、その装置をつける前に準備が必要になりますので、準備を一緒にできればと思います。ただ磨き残しがあまり減っていないと、治療の回数が増えてしまう可能性がありますが、できるだけ時間を掛けずにやっていきたいと思います。この段階はちょっと面倒と感じてしまうかもしてませんが、大事な治療なのでよろしくお願いします。」

F「はい。ありがとうございました。」

 

DH:「何か心配な事はないですか?」

F「私の方からは、さっき先生から伺った短根の歯根吸収のリスクと、いつ矯正を始められるのか、心配なのはその2点です」

DH:「歯根吸収は年齢が高くなってから治療した方がでやすいみたいですね。私も成人してから矯正しましたが歯根吸収は少しでました。根っこが尖っていたところが丸くなって少し短くなったんです」

F「そうですか」

DH「はい。年齢が若い方がそういった変化はしにくいようです」

F「どうなんでしょう。今治療するのはタイミング的に悪くはない時期という事ですか?」

DH「そうですね。大人の6番も出てきているので」

F「わかりました」

DH「まずはお口の中の細菌のコントロールの治療から始めていきたいと思いますのでよろしくお願いします」

M「ありがとうございました」

 

 

●●取材を終えて●●

矯正治療を始めるために必要な事、始めてからの注意点、将来を見据えての治療計画、なんのために矯正するのか、晝間先生の説明は1時間におよび、しっかりと説明を伺う事ができました。衛生士さんからは現在の口の中の状態を詳細に分析したデータを説明していただき、どのようなリスクがあって、どう対応していけばいいのかを分かりやすく教えていただきました。Mちゃんの一生懸命に説明を聞いている姿と、同席されたお父様の子供の歯並びを考えて悩む親としての姿が印象的でした。先生のお話を聞いていると段々とMちゃんよりもお父様の方が熱心になって、たくさんの質問をされていました。親御さんにとっては子供のためになるようにと考えての矯正という決断でしたが、それにともなう抜歯という選択、また今後起こる可能性のある歯根吸収などのリスクを詳細に説明していただいて、最後まで悩まれているのが伝わってきました。受験と重なる時期に矯正治療を行う事もあり、矯正する本人だけではなく、家族の方の心の準備もしっかりと行う事が重要であると感じました。

投稿者 Kanba : 2013年09月24日 16:00

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