ひるま矯正歯科

院長:晝間 登喜男 晝間 康明
〒190-0012 東京都立川市曙町2-9-1  菊屋ビルディング2F
Phone:042-526-3376 Fax : 042-528-1102 URL:http://www.hiruma.or.jp/
医院のホームページには「質問コーナー」が設置されており、そこで先生は多くの質問に回答している。

― 「質問コーナー」で先生の治療に対するこだわりが色濃く出ていますが、そのあたりを聞かせてください

僕が闘っていることは3つあります。
1つ目は、非抜歯に対してです。抜歯しますかと誰に聞いてもしませんというのに決まってる。誰も抜歯はしたくない。ですが、不正咬合というのはもともとが不調和があるということで、調和をとるために、顎の大きさと歯の数を揃えなければならない。抜歯は調和をとるためのあくまでも手段なんです。どこそこの医院に行くと歯を抜かないでやってくれるなどというのは、非抜歯そのものが目標になっているから、患者さんにとっては非抜歯でやったことに対する満足感は得られても、非抜歯では実のところ調和はとれないのですから、できあがりには不満なはずです。

例えば、不調和の最大の原因と言われているのが、顎の大きさに対して歯が大きすぎるということ。そのために歯並びが悪くなる。つまり、大きい歯が小さな顎に収まりきらないからでこぼこになっている状態で、口元の調和がとれなくなっている。それを非抜歯で治すと考えてみてください。歯を綺麗に並ばせようと思えば並びます。ですが、その大きい歯を並ばせるためにはさらに大きい顎が必要ということになりますね。非抜歯治療というのは、顎を拡大して強引に歯を並べるということなのです。単純に考えても出ている口元が下がるはずがない。歯を綺麗に並べたところで、根本的な問題である口元の調和はとれないのです。さらに言えば、顎を拡大して強引に歯を並べると歯茎は常に緊張を強いられます。そのため歯茎は退縮してしまい歯肉にとってよくないという論文が歯周病科から出ています。

2つ目は裏側矯正に対して。これは目立たないこと以外はすべて欠点といえます。実際に裏側からできるケース、適応者はすごく少ないと思いますが、それでもやるならば、デメリットを充分説明したうえで、しかも最後は表側に戻して治療をしなければなりません。そうでなければ、仕上がりは専門医同士がみたら絶対に不満足なものであるといえます。裏側矯正はいい治療をしたいと考える僕にとっては、絶対に手を出さない治療法です。

3つ目は主に小児歯科が扱う早期矯正治療に対してです。3歳や5歳の子供の早期発見早期治療というのは、一般的には間違いじゃない。けれども矯正の場合には早く装置を入れれば早く治りますよという誤解をあたえる危険性がある。子供の矯正治療というのは、多くが親不知まで診ますから18歳ぐらいまでということになります。3歳で始めても18歳まで。それを親に言わないで、早く早くと治療を急かす。早期発見は間違いじゃないが、早期治療というのは必ずしも正しくないんです。

例えば、3歳から治療をして、将来の外科手術を回避できるかといえば、できないんです。僕の場合はこの子は将来外科手術を受けなければ治らないと思えば、はっきりそう言います。ところが、それを言わないで期待を抱かせたまま、小・中・高と学生の青春時代に矯正の装置をずっと入れさせて、18歳ぐらいになってやっぱり治らないから外科手術です、というのが本当に許せない。患者さんはお金と青春をどうやって取り戻せばいいのか。

前述の榎先生の有名な言葉に「Watchful neglect(注意深い観察下に放置せよ)」というのがあります。つまり僕ら矯正医のすべきことは、検査をして資料は取りますが、「Watchful neglect」でもって、一番いいタイミングで一番いい治療を短い期間でする、ということなんです。

― インプラント矯正についてはいかがですか

一つの手段ですね。しかし多用してはいけない。矯正は侵襲(しんしゅう。体に対するダメージのこと。医学用語)を加える治療ですが、できれば侵襲の少ない治療が望ましい。つまり、最適な矯正力で最適な期間をかけてじわじわと動かす。血を流さない治療です。だけれども、インプラントは外科手術なんです。従来の技術、ゴムやヘッドギアなどの使用でカバーできるところをわざわざ外科手術をする、というのに抵抗がある。高いお金を払って、骨膜を開けて、インプラントを打つ。感染の危険を冒して外科的侵襲を加えるのはどうなのか。私はやりたくありません。

それと、非抜歯の問題と重なりますが、インプラントを扱う医師は、非抜歯で治療をするために親不知を抜いてそこにインプラントを打ち、7番6番5番4番と引っ張っていくんです。そうすれば4番の第一小臼歯は抜かなくてもいい、という理論なんです。外科的侵襲を与え失敗も多いインプラントを打ってまで非抜歯にこだわる価値があるのかどうか。疑問ですね。