文京(小石川)先生の「みんなの疑問Q&A」
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[239] 可撤式床矯正治療について- ■親質問/質問引用/メール受信=OFF■ □投稿者/ Poetess_Laureate -(2001/07/11(Wed) 15:29:55) □U R L/ 私には完全に内側に入り込んで三つ葉のような状態になった歯があります。 その為に歯全体が大きく左にずれ、右前歯の中心が唇の中心にまでずれて歯並びの悪さを強調してしまっています。 三つ葉の中心はどうしても歯磨きが不完全になりがちで再三歯科から抜く様すすめられて参りました。 しかしながら抜く事によって更に歯全体が左にずれてしまうのではと言う不安や、そうなら無い為には右からも一本抜かなきゃいけないのでは、としたら上下の噛み合わせは?消化器系への負担は?と言った疑問から歯を抜く事をさけて参りました。 矯正治療が成長過程にあるこどもの為のものと言う先入観もあって矯正を目的に歯科を訪ねる事もしてきませんでしたが、半年程前の雑誌で私より十歳程上の作家林真理子氏が矯正治療を終えたばかりである事を知り治療への強い興味を抱きはじめました。 最近新聞広告で「抜かない歯医者さんの矯正の話」と言う本の存在を知りました。 その本によれば矯正治療にはおおむね三種類あるとのこと 1-口腔外科治療-上下四本の歯を抜いて矯正の為のスペースを作る。 2-審美歯科治療-歯の形を削って歯並びを変える。 3-可撤式床矯正治療-食事等の時には取り外す事が可能な装置で矯正に必要なだけ顎の骨を広げる。 この本で紹介されているのが「可撤式床矯正治療」です。 抜かないで済むと言う一点においてぜひこの治療を受けたいと言う気持ちが芽生えていますが、不安もあります。 それはこの本にこの治療法の欠点がほとんど紹介されていないと言う事です。 巻末の資料によって知る限りこの治療法を取り入れている歯科医院がほとんど全て個人歯科であり、歯科大学などの付属歯科医院などでの治療実積がわからない事もあって、副作用や欠点が広く知られていない治療にかえって不安を感じるのです。 「可撤式床矯正治療」における副作用や欠点および歯科大学などでの治療実積についてぜひとも解説を加えていただけませんでしょうか。 |
[240] Re[1]: 可撤式床矯正治療について- ■質問引用/メール受信=OFF■ □投稿者/ 小石川矯正歯科クリニック -(2001/07/11(Wed) 23:11:07) □U R L/ http://www.koishikawa.com <現在の症状?とその症状に対する多くの歯科医師、矯正医の考え方> ずいぶん悩んでいるようですね。記述されている三つ葉のような状態とは多分前歯がきれいに並ばず、重なり合っているようなことを訴えていると思うのですがどうでしょうか?。そのような状態のために診て頂いた先生から抜歯を勧められていたのでしょうね?。違いますか?。隣合った歯が重なったり、ねじれたりして位置付けられているとしたら、叢生(そうせい)という症状であると思います。このような症状の治療法の一つに抜歯(典型的には上下左右第一小臼歯4本の抜歯)による改善方法があります。この方法は、理路整然とした抜歯理由があります。抜歯をするかしないかの分析法の結果により決められます。ほとんどの歯科医師、矯正医はできるだけ抜歯は避けたいと思っていますし、その努力も惜しまず日常の臨床に従事していると思います。 <相談者の抜歯に対する考え方について?またその対応?> 抜歯をするか?しないですむか?は先に話しましたように「ある基準」で判断されます。それらのチェック項目は次のようなものであり、それらが総合的に判断されてはじめて患者さんに提示されます。その結果を患者さんがどう受けるかは別問題ですが。 (1)上下顎骨の前後的、垂直的、水平的(3次元的)不正の改善量 (2)上下歯列における叢生の量(重なり合ったりしている量) (3)上下前歯歯軸の改善傾斜角度の量 (4)いわゆる審美的な口元を得るための改善量 (5)成長発育期かどうか? 等が検討されます。従って単純に重なり合ったりしている歯を整然等きれいに並べるのに必要な量の過不足で抜歯や非抜歯(ひばっし=歯を抜かないこと)を決めている訳ではありません。Poetessさんがどのような改善すべき症状を持っているかが分かりませで、Poetessさんの症状改善のために抜歯が必要かどうかのコメントは避けます。詳しくは多少の費用がかかっても検査診断行為まで行ってもらい粗の時点で御自身の治療計画をよく聞いたらどうでしょうか?。通常、診断までの治療を依頼されることは少なくありません。ただし、この条件で診てくれる先生は少ないかも知れません。 <Poetessさんが入手した記事、情報について> 林真理子氏の矯正は治療を考えている成人にとっては福音でした。矯正治療には特に決められた年令はありません。年令が増してくるとかみ合わせも変化します。かみ合わせというのは生き物と同じです。ある年令では正常と判断されたものも、加齢(aging)とともに変化します。従ってどの年令でも矯正治療の必要性はあるものと考えた方が理屈に合います。Poetessさんもよい機会かも知れませんね。 さて、入手された情報について少しコメントを加えてゆきます。 (1)歯を抜かない歯医者さんの話し 知っていますが、この本の内容には、論旨の無理があります。例えば、子供用の3人がけの長椅子に大人のサイズの3人はすわれません。無理矢理すわるとすれば体をねじったり(ねじれている歯)、浅くすわったり、一人にひざの上に他の人がすわったりするような状況でしかありません(重なり合って位置している歯)。成人期といわれる、顔、顎の成長発育能力がほとんどない時期では、この子供用の長椅子のサイズは基本的に変わるものではありません。従って、子供用の長椅子にすわるのは大人2人となります(一人抜ける=1本抜歯される)。 (2)それでは顎を大きくすれば良いのではないか?、そのための矯正装置がある。という主張ですがこれを臨床的に証明したものは顎のこときり手術を併用する等の手法を取り入れない限り無理なことです。歯は抜かなかったが、そのかわり矯正治療と手術を併用した?、このようなことであれば歯を抜かない矯正という主張の論旨の展開に無理が生じます。似たような例で、親知らずは抜くが他の歯は抜かなかった?、本当に歯を抜かない治療といえるのか?、これらも無理があります。 むろん、このような親知らずを抜き、その前の歯は抜かないで治療を行うということは私自身でも行いますし、そのような方法は何十年も前からある方法のひとつです。従って今さらトピックス的に取り上げること自体がおかしいとも思います。決して批判している訳ではありません。当たり前の方法の一つになるべき歯を抜かず、もし抜くことがあっても親知らずにしておこうという方法に反対ではありません。 (3)その他の歯を抜かない方法? 窮屈に重なり合った歯列(しれつ)のどこかにスペースを作れば良いことになります。その具体的な方法は a.歯を後方に移動する b.歯列を横方向(側方方向)、前方向(唇の方向)に広げる c.顎自体を手術などの外科的処置で広げる 等が典型的な方法です。これらの組み合わせの治療により得られるスペースの量次第で抜歯しないですむことは少なくありません。 <可撤式床矯正装置について> 歯を一番正確に動かし、目的とする位置に位置付ける装置は良く見かけるワイヤーをつけた装置です(マルチ ブラケット法(装置))。Poetessさんが書いた取り外しが可能な可撤式床矯正装置(かてつしきしょうきょうせいそうち、以下床装置と呼びます)の治療効果はマルチブラケット装置にはかないません。歯の動かし方、顎への治療効果にも限界があります。この装置を使用して抜歯をしないで済むような症状は軽度な症状と考えても良いと思います。装置にも適材適所があります。従って、この床装置の適応症状であれば私も使います。ここでいいたいのは、床装置の使用=抜歯をしないで済む、という図式は成り立ちにくいということです。くり返しますが決してこの床装置をけなしているのではありません。装置=治療の処方は適材適所的な使い方でなくてはならないということです。 Poetessさんが心配する副作用というような言葉は特に見当たりませんが、むしろこの装置には治療能力の限界があるということです。大学でも使用していますが一連の治療計画の中のある直に使用し、この装置だけで治療を終了することは少ないと思います。 装置の解説を文字だけでするのは不正確となることが予測されますので止めておきます。またこの床装置を使用して効果を上げている先生方も多くいるかも知れません。私が示したコメントに対し、そうではないよ、良く効くよ、具体的な症例も持っているよ、という方がいましたらPoetessさんに違った観点からアドバイスして下さい。 また何かあればどうぞ。 |
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