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歯を抜かない矯正(非抜歯矯正)
抜歯・非抜歯について
歯並びが悪いのは、歯を並べる顎のスペースが不足していることが主な原因ですから、奇麗な歯並びにするためには何らかの方法でスペースを作らなくてはなりません。
通常は、第一小臼歯を上下左右1本ずつ(計4本)抜いて、その空いたスペースを利用して歯を並べる方法が一般的です。
【第一小臼歯を抜いて矯正を行う例】
しかし、健康な歯を抜きたくないという思いから、非抜歯矯正を希望される方は多くいます。
非抜歯矯正には、後述するようないくつかの方式があるのですが、ただ、残念ながらすべての方が非抜歯で矯正を行えるわけではありません。歯の生え方や骨格はそれぞれに異なり、患者さんの症状によっては、非抜歯には適さず、抜歯をしてスペースを設けることで最良の結果が得られるケースが多くあります。矯正は歯をただ一列に並べればよいというわけではなく、噛み合わせや顔貌(顔立ち)を良い状態にすることが必要だからです。
しかし、歯を抜かなくても治療可能な症例であれば、もちろんそれに越したことはありません。
抜歯が必要か、抜歯せずに治療できるか、個々の症例については、矯正治療経験の豊富な信頼できる歯科医院に相談することが大切です。
非抜歯治療の方式
現在行われている非抜歯矯正は、主に下記の3種類の方法があります。
1. 歯列を側方へ拡大する
歯列自体を側方(外側)に拡大することでスペースを作る方法です。
床矯正装置などの拡大装置を使用して拡大を行います。
→床矯正
拡大できる幅には限界があり、どんな症例でも拡大で対応できるわけではありません。
顎の成長期である子供や、歯列の幅が狭い場合、歯が内側に傾いている場合などに適した方法です。
無理に多量に拡大すると後戻りが起こったり、口元が突出して審美的に悪くなる場合がありますので、信頼できる歯科医院に相談することが大切です。
2. 奥歯を後方へ移動する
一番奥の歯をさらに後方へ移動することで、スペースを作る方法です。
奥へ移動できる幅には個人差がありますから、すべての症例が対応できるわけではありません。また、欧米人に較べて日本人は顎の奥行が浅いので、移動できる幅も少ない傾向にあるようです。
3. 歯の表面を削って隙間を作る
歯と歯の間の部分を少しずつ削ってスペースを作る方法です。
歯のエナメル質の表面のみを削るため、歯がしみたりすることはありません。
しかし、歯を削るだけで作れるスペースはわずかですので、適用はごく軽度の症例に限られます。
また、子供の歯を削ることはリスクがあるため、子供には行いません。
抜歯/非抜歯の基準
抜歯か非抜歯かは、症例ごとに、歯を並べるために不足しているスペース幅や、噛み合わせや骨格の状態、口元の審美性、成長の可能性などを総合的に判断して診断します。
そのうち、不足しているスペース幅について、米国のプロフィトは下記基準をまとめています。
(参考)T級叢生と上下顎前突症例における抜歯の基準 (プロフィト)
歯を並べるために不足しているスペース幅(ディスクレパンシー)が、
4ミリ以下 | 抜歯はあまり勧められない |
5〜9ミリ | 抜歯・非抜歯いずれの治療も可能(大小臼歯の側方拡大が必要) |
10ミリ以上 | 抜歯が必要 |
※上記は基準のひとつであり、すべての人にあてはまるわけではありません。
また日本人は欧米人に較べて顎の奥行が浅いため、非抜歯の適用が少ないといわれています。
非抜歯治療による失敗
前述のように、各患者さんによって非抜歯治療ができるケースと、抜歯の必要なケースがありますので、適さない症例で無理に拡大治療を行うと治療結果が悪く再治療が必要になる場合があります。
(例)
- 口元全体が前に突出したり、前歯が前方に傾いて出っ歯のようになることがある。
- 歯が外側にひろがり、骨からはみ出してしまうことがある。
- 装置を外した後、後戻りしてしまうことがある。
このため、治療は必ず矯正治療経験の豊富な信頼できる医院の診断を受けることをお薦めします。
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